前回のページでは、アレルギーの発症する仕組みについて言及しましたが、
IgG/IgE細胞を介さない発症の経路で、最近明らかになってきた事実があります。
IgE細胞でなぜアレルギーが起こるかといえば、
付着したマスト細胞が活性化し化学物質が大量に放出されることが原因でした。
つまり、マスト細胞が活性化する他のルートが存在していれば、
他の要因でもアレルギーが発症するということなのです。
マスト細胞が活性化することがアレルギーの条件

アレルギーは、マスト細胞が持つIgE受容体にIgE抗体が付着することで活性化します。
言い換えれば、マスト細胞が活性化する他の手段があれば、
IgE抗体を介さなくてもアレルギーが発症すると言うことになります。
人間の体には、2つの免疫システムがあり、その中の1つが
IgE抗体と同様にマスト細胞を活性化させることがわかっています。
2つの免疫システムとはどのようなものなのでしょうか。
体内侵入物にまず反応!自然免疫

自然免疫とは、感染症などの場合に病原体が体内に侵入すると、
その病原体を直ちに排除しようとする仕組みです。
体内に侵入した病原菌に真っ先に駆けつける、
マクロファージやNK細胞、顆粒球と言った免疫細胞を指しています。
NK細胞や顆粒球が細胞を攻撃して破壊した後に、
マクロファージが残骸を食べて片付ける、という役割分担になっているのです。
これらはいわゆる「人が生まれつき持っている免疫」。
しかし、自然免疫の目の届かないところで増殖した病原菌などに対しては、
「獲得免疫」と呼ばれる免疫システムが作動します。
状況に応じた対応をする獲得免疫

これに対し獲得免疫とは、病原体に感染しても直ちに攻撃が行われるものではありません。
1週間以上の期間を経て、その病原体のみに働く抗体が作られて排除が行われる仕組みです。
癌細胞のような病原体に対して攻撃を仕掛けてくれるため、
自然免疫とともに大事な体の防衛システムになっているのです。
免疫にはこの自然免疫と獲得免疫の2種類があるのですが、
実は「自然免疫」の中にマスト細胞を活性化させるリンパ球があることが近年明らかになってきました。
自然リンパ球による炎症反応

近年注目されているのが、自然免疫の2型自然リンパ球(ILC2)です。
このILC2は、主に皮膚の表面や気道などで起こる炎症反応に対して働きます。
通常、マスト細胞はIgE細胞を受けて活性化しますが、この自然リンパ球は
マスト細胞を活性化させる物質を放出するため、
アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の発症に深く関わっていることが判明しています。
これらのように、今後も新たにアレルギーが発症する経路が見つかることもあります。
アレルギーはまだまだ解明されていないことも多い疾患なのです。
続いてのページでは、免疫力とアレルギーの関係について見ていきたいと思います。