世界の中で見ても日本人は「綺麗好き」が集まった国だといえるでしょう。
日本は公衆衛生の環境は抜群、公共施設のトイレもピカピカと言った「良環境」に囲まれています。
しかし、この綺麗好きの環境とアレルギーには、実は密接な関係があるのです。
Lesson3では「現代社会とアレルギー」というテーマで、
現代のアレルギーに対する課題を学んでいきましょう。
昔の日本人は「花粉」にすら耐性があった

驚くべき事に、日本で初めて「スギ花粉症」の症例が認められたのは
今からわずか60年前の1963年なのです。
言い換えれば、昔の日本人はスギ花粉を吸い込んでも、花粉症にならなかったのです。
日光の杉並木が植えられたのは17世紀の中頃ですから、
アレルギーが発症するまで3世紀もかかっていました。
それほどまでに昔の日本人の免疫力は高かったのです。
食物アレルギーの医学的な認定は1950年が最初

牛乳が授乳に主流として用いられるようになった20世期から、
ミルクアレルギーという概念が生まれ始めました。
食物アレルギーが医学的な臨床疾患として認められたのは、
1950年の食物経口負荷試験が最初です。
その後、食物除去療法やアレルゲンを用いた「リブリックテスト」などが行われるようになり、
アレルギーに対する治療方法も多くの検討がなされてきました。
これらのように、アレルギーは近代になってから疾患として診断が始まったのです。
アレルギーが増える要因「環境衛生説」

アレルギーは、その人の健康状態や生活している環境、
精神的な疲労などが複合的に発症の要因になると言われています。
ここで問題なのは、多少の細菌や不衛生な環境はむしろ
アレルギー発症の観点からはあった方がいいという事です。
近年では身の回りの至る所で「除菌」「抗菌」が謳われており、
完全無欠な清潔状態がよしとされています。
しかし、そのような環境下では皮肉な事に免疫の性質を弱め、免疫機能の誤作動を起こしやすくなってしまうのです。
世代と共に受け継がれる「清潔思考」

1960年以降、アレルギー体質の日本人は増え続けていると言われています。
より潔癖な暮らしを求めた「都市型」の生活をしている人ほどその発症確率は高く、
大都市出身者では92%がアレルギー体質にまで膨れ上がっています。
「清潔思考」がもたらしたのは、皮肉にも免疫の誤作動だったのです。
言い換えれば、「衛生環境が良くない国」ほどアレルギーが発症しにくいということにつながります。
続いてのページでは「世界の衛生環境とアレルギーの関係性」について学習しましょう。